とてもよい読書だったと思う。南米小説のようでもあり、邦画のようでもあり。マジックリアリズムの世界というのは、リアリズムとか言いつつ、現代日本人の現実から見るとまるきりファンタジーなのだけど。それを、なんか不思議なやり方で我々の現在につなげてみせた。美しいことだ。
祖母や母の物語のパート、時代描写が薄っぺらいのが良くない、みたいな批判を割と見るんですが、どうもそれに納得がいかないのです。あれは、わざとじゃないの?
物語化されて解釈される過去と、隠された本当の過去と、物語化しきれない本当の現在。それらを並べて示すことで、現在に生きるしかない我々がどう世界と向き合うか、みたいなことがやりたかったんじゃないか。そして、それは成功してるんじゃないか。
もっというと、物語化にも階層があって、外部によって物語化されたか、自ら物語化したかで手触りが違うよね、というようなことを提示されている気もした。そんなことを思ったわけです。まあぜんぶ私の妄想なんですけど。
逆に、これで時代が生々しくもリアルに描かれていたとして、小説としての重みが上手い具合に増すとも思えなかったのもありまして。いずれにせよ、個人的にはとても楽しめたのでヨシ。
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