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もりげのどうかと思うような日記

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2006年03月04日(土) 契約

山田オルタから妄想

もともとはパーソナルコンピュータにのみ感染するタイプの、いわゆるウイルス・プログラムだったのだという。通称、山田オルタ。名前の由来などについては複雑な経緯があるが、ここでそれについて語ることは控える。

山田オルタに感染したコンピュータはサーバ化し、バックドアを通じてその活動のすべてをネットワーク中に公開する。ハードディスクの中身はすべてネットワーク上の共有ファイルとして扱われ、また、そのコンピュータのスクリーンショットが、外部から、完全なリアルタイムで取得可能となる。

山田オルタの最大の特徴として、感染コンピュータ同士でリンクを形成する点が挙げられるだろう。特定の感染コンピュータが提供するリンクのリストページを通じて、すべての他の感染コンピュータを辿れるのである。次々と新たな感染コンピュータがリンクへと加わっていく様子は、細胞性粘菌の一細胞が仲間の細胞を感知し、蝟集するさまに似て、どこかしら生物的でもあった。

おそらくはこのウイルスが登場した時点で、「結社」の核は誕生していたのだ。某検索サービス会社の中心人物が提唱したとされるこの「結社」には、ハッカーと呼ばれる若者たちを筆頭に、多くの優秀な人材が集められていった。無論、物理的あるいは地理的にではなく、まずはネットワーク上で。思想を一にする者たちがコミュニティを形成するのに、ネットワーク社会はあまりに便利な世界である。

そうして膨れ上がっていった「結社」には、各種の治安機関の重鎮までもが名を連ねることになったと囁かれる。あるいは、「国家」(主に地理的な、場合によっては遺伝的な要件に基づく大規模な擬似コミュニティ)の元首たちでさえ、その触手を逃れはしなかったとも。彼らが為したことは、表面的にはひとつのソフトウェアをばらまいただけのことである。しかし、それは神話に立ち向かうような行為でもあった。

「プライバシー」――肥大した自我の作り出した神話の一部として、その概念は存在した。他者からは不可知の聖域として設定される、個人による自由の権利。秘匿すべき事柄や禁忌事項が数多に存在する社会が、プライバシーという概念を醸成した。一旦成立したこの概念は、禁忌事項の禁忌性を強化するフィードバックループとして働いた。結果、プライバシーとは、文化の中で、常に以前よりも重要な位置を占めるように変化してきた。山田オルタの活動などは、その重要な権利を侵害するものとして恐怖される対象だった。

だが、こう考え始めている人々も確かに存在した。すなわち、プライバシーの侵害は、人類全体の繁栄のためにはむしろ推奨されるべきなのではないか、と。テロによる大量殺戮から、個人同士の相互誤解による小さな不和まで――社会を蝕むあらゆる病巣は、情報の流れの停滞を取り除くことで緩和できるはずであった。プライバシーという、他者に不可知の領域の存在は、情報の流れをせき止める以外に何の役にも立っていない。プライバシーの名の下に情報が大量に隠匿されることは、未来の予測の精度を著しく低下せしめる、恐るべき害悪であった。

当時、個人用移動端末はまだ脳と結線されていなかった(インプラントですらなかったのだ!)とはいえ、その機能は大幅に拡充しつつあった。社会活動のすべての場面に、この端末が関わり始めていたのである。肌身離さず持ち歩かれることが常であった端末は、個々に割り振られた識別コードと、全地球測位システムによる位置情報によって、物理的存在としての個人を電子的に標識する。

物理的存在としての個人は、すべてが情報として処理されるような社会においても重大な意味を持つ。なぜなら物理的存在としての個人こそが、その情報活動の根幹であり続けるからである。極端な説明をするならば、こういうことだ。すなわち、物理的存在としての個人を抹殺すれば、そのすべての情報活動を断つことが可能である。

「結社」は物理的世界とネットワークの接点としての特性を持つ、これら高機能化する個人用移動端末に目をつけた。端末は、その所有者の人格そのものを体現するようになりつつある。ならば、この端末の有する情報を常に外部に開示し続けることで、プライバシーという障壁を完全に打ち壊すことができるのではないか?

そして、彼らの思想の結実は、表面上は単なる固定端末/移動端末共通の高機能横断検索ソフトとしてリリースされ、無償で提供された。インターフェイスまでが完璧に計算されたその利便性から瞬く間に全世界へと広がった頃、プログラムに仕掛けられた爆弾が作動した。そのことがもたらした影響は、「結社」の面々の考えていたよりも遥かに巨大なものであった。この出来事を端緒として、人類という知性は完全に変容をとげていくことになる。

…………なんでこんな長くなってるんだ……。疲れてきたからもうやめ。うーん。実際のところこんなことでは何も変わらないよなあ。ネットワークの利用にインフラの整備が欠かせないってのはどうしようもない事実でして。おれ頭わるいなぁ……。

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