ネトゲの中に、自分の生きている価値を見つけてしまった大学生の物語。現実世界での「音」という単語がぜんぶ「SE」に置き換えられているなど、やりたいことは良くわかるけどちょっと鬱陶しく感じるくらいだった。
その割に、ネトゲの中の空の色が「うそ臭いターコイズ・ブルー」なんであって、決して現実世界の空の色が「空きチャンネルに合わせたTVの色」だったりはしないのだ。
まあ、その辺からしてどうも中途半端な印象はぬぐえない。ネトゲに生きながら同時に現実世界での彼女を作ろうというのは、ちょっと物語としてぬるすぎませんか。
作中のネトゲはMMO格闘なる分野の「バーサス・タウン」という架空ゲームだが、これが架空でなかったら一種のゲームノベライズとして捉えられるような、そんな感じの小説。ゲーム内の戦いとかを詳細に描いたノベライズを読むのはぼくは結構好きで、そんなわけで細かく描写された「バーサス・タウン」は遊んでみたくなった。まあ、実際はぼくの格闘ゲームに関する才能は致命的なまでに低いのだが。
そういえば、「ゲーム内最強も彼女もゲットだぜ」みたいな話の流れ(ノリは違いますよ、あくまで話の流れ)から連想してしまったのが、昔懐かしい「進研ゼミ」の勧誘DM。あれには必ず漫画が入っていて、主人公の少年は進研ゼミを始めるとなぜか女の子と仲良くなれるという展開がお約束だった。馬鹿にしながらも毎回ついつい読んでしまうもので、とくに女の子がかわいく描かれているとけっこう楽しんでいたような覚えがある。
そういうレベルの話をするなら、この作品ももちろん楽しんだのであった。
プロのネットゲーマーとかこのさき絶対現れるよなあ。友人知人にネトゲ廃人がいるようなぼくらの世代にとって、身につまされる作品ではあるかも。
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