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もりげのどうかと思うような日記

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2006年02月09日(木) 裏口より入りゆく

最果てのイマ

初めて、である。

田中ロミオ(山田一)の作品で初めて、やって良かった、と心から言えるものに出会えた。

『加奈』『家族計画』『CROSS†CHANNEL』――いちいち文句をつけながらも、『最果てのイマ』に手を出してしまったのは、ノベルゲーム分の不足からくる気の迷いのせいだった。それだけのことだったはずだ。

だが、その自身の気の迷いに感謝する――

ネット上のログの形式で綴られる、時系列のバラバラに入れ替えられたエピソード。仲間と過ごす日常を描くのみに見えた物語は、しかし次第に何か得体の知れぬ不安を孕んでゆく。いつの間にか、互いにひどく矛盾するとしか思えぬ内容が積み重ねられている展開は、温度の低い文体と相まって、なかなかに鋭い焦燥感の切っ先を突きつけてくる。

そして、物語の背後に隠されていた大ネタが姿を現す最終章のセンス・オブ・ワンダーと言ったら。千々に撒かれたピースの配列に関する解答には無理筋としか思えぬ仕掛けがあるものの、私はこの大ネタのビジョンだけですべて許しますよ。

テーマや構造、全体の雰囲気としては、『CROSS†CHANNEL』に共通する部分もある。しかし、『CROSS†CHANNEL』の「小手先でちょちょいと書きました」具合に比べると遥かに、遥かに練られ、質が高いものとなっている。

思えば、SFとして評価する人が多かった『CROSS†CHANNEL』に対し、私は「これはSFではない!」と憤ったのだった(アホ)。

では『最果てのイマ』は? これはSFである! それもなかなかに味のある。世評では難解とされる作品のようだが、大筋は決して難解ではないし、設定・構造・テーマを貫く筋が一本通っているのは何よりも美しいと思う。

ただし、長すぎる。それと、エンディングに至るための手順にプレイヤーにとっていささか苦痛を伴う部分がある。それらを我慢できるSFファンであるならば、手を出してみてまず損はありえない作品であろう。

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  1. もりげ (04-13)
  2. トリガラ (04-13)
  3. V林田 (04-12)


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