新潮社のサイトにある、瀬名秀明氏による『デカルトの密室』特別講義録を読み終えた。なぜかまた「『あれはSFじゃない』『いや、SFだ』と論争するSFファン」についての記述が入ってるあたり、瀬名さんはとてもお茶目だと思うんだが、まあそれはさて置くとしても、とても面白かった。
実は、瀬名秀明の持つ「物語」への強い執着は、ぼくも非常に共感できる部分で、それに対する明晰なアプローチ(を試みようとする姿勢)は正に、日々の悩みとぴったりフィットする。そういう意味でぼくにとって彼は稀有な作家ではあるのだった。
でこの講義でありますが、『デカルトの密室』で最後に回答の与えられるテーマがむき出しで述べられているので、小説をこれから読みたい人は、もしかしたら読み終わってからの方が良いかもしれない。
でも逆に、これを読めば小説読まなくていいんじゃね? という気がしなくもない。小説本文を読んだときより、よほど彼のやりたかったことがストレートに伝わってくるし、感動も深かった。
小説内であれこれ用いられていた手法やら引用やらの意図が、この講義によってはっきりと理解された、その感動もあるのかもしれないが。デカルトの3つの格率と指輪物語のサムの話が、瀬名氏の中でどう繋がってたかなんて、この講義で読んだ方がずっとスッキリ納得できる。
知能とは、自由意志とは、コミュニケーションとは、倫理とは、そんな数々の疑問に対する答えを導くための、ひとつの方向性がここに示されているように思う。ぜひ読みましょう。
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